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個人事業主が事業計画書を作成するメリット

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事業計画書の作成は必須ではありません。そもそも法人であっても事業計画書の作成が義務付けられているわけではなく、融資を受ける際などに提出を求められるため、必要に迫られて作成をしている例が多いのです。

ただ、「事業計画書はまったく必要のないもの」とまで言うことはできません。むしろ個人事業主であってもこれを作成することで得られるメリットはたくさんあります。

当記事ではそのメリットについて紹介していますので「これまで事業計画書を作成したことがない」という方もぜひ目を通していただければと思います。

事業計画書を作成するメリット

事業計画書作成のメリットは以下のようにまとめることができます。

  • 資金繰り状況の整理ができる
  • 資金調達の手続で使える
  • 合理的な判断ができるようになる
  • 競合との差別化・競争力の強化ができる
  • 取引先の開拓に使える

これらは個人事業主にもいえることです。

「一緒に経営判断をしてくれる役員がいない」「他に事業計画書を作成している事業者はあまりいない」という点に着目すれば個人事業主にこそ大きな利点があるとも考えられます。

資金繰り状況の整理ができる

売上を伸ばすこと、利益を伸ばすことも重要ですが、そのための活動を円滑に進めていくには現金の準備も必要です。特に仕入が必要な業種だと支出があってから収益につながるまでに時間がかかりますので、一時的な資金不足が問題となるケースもあるのです。

この点、事業計画書を作成する過程では資金繰り状況が整理できますので、キャッシュフロー、リスクマネジメントの適正化につながるというメリットが得られます。

資金調達の手続で使える

資金調達として銀行から融資を受けようとするとき、事業計画書の提出を求められることがあります。

金融機関も無償で社会貢献をするために活動しているわけではありませんので、「融資によって利益を得られるだろうか」「約束通りに返済をしてくれるだろうか」といった評価を行う必要があるのです。その評価をするための一資料として事業計画書が使われます。

例えば、個人事業主や創業間もない方などでも融資を受けやすいものとして日本政策金融公庫の融資制度があります。複数の融資制度が設けられており、利用条件を緩和するための新創業融資制度なども用意されています。
しかしこれら事業者に優しい設計がなされた融資制度でも、事業計画を策定していること、さらにその計画を遂行する能力があると認められること、などを求めています。

投資を受けようとする際など、その他様々な場面で事業計画書は使われます。事業者がどんなことをしているのか、現在どんな状況なのか、今後どのような活動を予定しているのか、こうした情報を説明するために使うのです。

事業計画書を作成しておけば、こうした様々な資金調達の場面で活用をすることができます。

また、必要に迫られてから作るのではなく前々から自主的に作成をしておけば、必要な場面でより質の高いものを作ることもできるでしょう。いきなり良い事業計画書を作ることは難しいですし、先に作成しておけば「計画を遂行できた」という実績を作ることもできます。

合理的な判断ができるようになる

資金調達などの手続で使わなくても、事業計画書を作成しておくことで「合理的な経営判断が下しやすくなる」というメリットが得られます。事業の全体を見渡せるようになり、場当たり的な判断ではなく客観的な分析に基づく判断ができるようになるのです。

法人のように複数の役員や社員がいる組織とは異なり、個人事業主は意思決定権が1人に集約されています。従業員を雇用することはできても、最終的な決定権や責任を持つのは事業主自身です。
そのためなかなか客観視することが難しく、事業計画書を作成するなど意識的にその機会を設けなければ主観・直観に頼った判断をしてしまうケースが多くなってしまいます。

合理的な判断に役立つ事業計画書を作成するには、注意深く外部環境および内部環境を分析していく必要があります。コントロールできない部分(外部環境)における機会や脅威、コントロールの及ぶ部分(内部環境)における強みや弱みを知ることが、実行可能な計画を策定するために重要だからです。

そして分析結果に基づき、現実的で定量的な目標設定。その目標を達成する上で直面する課題の抽出。課題を解決するためのアイデア、具体的な行動を明らかにしていくのです。

競合との差別化・競争力の強化ができる

事業計画書を作成する過程では、外部環境にあたる競合他社の存在にも目を向けることになります。

競争相手になる他の事業者はどのような経営をしているのか、どのように商品・サービスを提供しているのか、これらを知ることが差別化・相対的な競争力の強化にもつながってきます。

取引先の開拓に使える

分析を通して、新たに接点を持つべき事業者・消費者の存在が明らかになることがあります。販路拡大は事業の成長に重要で、リスクを分散して事業を安定させるためにも重要なことです。

事業計画書の作成を通して、どのようにアプローチをかけるべきか、どのようにプロモーションをしていくのか、判断がしやすくなるでしょう。

また、事業計画書をアピール材料として使うこともできます。相手方も素性の知れない人との取引には警戒するものです。法人と違って登記もされていないケースがほとんどですし、大きな取引になるほどいろいろと不安がつきまといます。
そんなときでも事業計画書の準備ができていれば良い印象を持ってもらいやすいです。事業の将来性、魅力も説得的に伝えやすくなります。

用途に応じて作り方は異なる

事業計画書を作るときは、用途にも意識を向けることが大事です。記載するデータ、実績、目標や課題、解決策、今後の方針などが変わるわけではありませんが、アピールの仕方が変わってきます。

例えば①融資を受ける場合、②投資を受ける場合、③補助金や助成金を受ける場合によって、示すべきポイント・強調すべきポイントが異なります。

  1. 融資を受ける場合
    「実現性の高さ」をアピールする。損益計画・資金計画が現実的な内容であり希望的観測になっていることが重要。
  2. 投資を受ける場合
    「成長性の高さ」をアピールする。収益力が高く将来的にも大きなリターンが得られそうであることを示すのが重要。
  3. 補助金や助成金を受ける場合
    「制度の趣旨に沿っていること」をアピールする。制度それぞれに資金を提供する理由・社会的な意義、そして要件があるため、それに適合することを示すのが重要。

このように資金調達のツールとして活用するときは、自分以外が見たときにどう感じるか、どのように評価されるか、を考えながら作成しなくてはなりません。
個人事業主だと1人で作成することも多いと思われますが、税理士などの専門家を頼ることも可能です。プロの意見も取り入れながら作成することで客観視ができ、より質の高い事業計画書を作ることができるでしょう。